6月20日施行の建築基準法一部改正について
昨年、建築基準法の一部改正が成されました。
それに伴い、指定構造計算適合性判定機関(以下、構造判定機関という。)が設立され、愈々この6月20日から施行されます。
姉歯秀次元建築士の構造計算偽装の事件以来、耐震強度不足の建築物が発覚し、又構造計算書や計算プログラムに不適切な使用方法があり、更に指定確認検査機関の偽装見逃しなど社会的大事件に発展したのを受け国土交通省が建築基準法、建築士法等の抜本的制度見直しを行った結果です。
今回の制度見直しについては、建築業界では様々な議論を呼んでいますが、当面の6月20日施行の内、「構造計算適合判定の義務付け」に絞って、現在の時点でわかる範囲で建築主が注意すべきポイントを、お話します。
耐震偽装事件後にマスコミにおいても時々取上げられた、構造の専門家同士で計算書を見直しするいわゆるピアチェックを、具現化したのが構造判定機関による計算書の審査で、一定規模以上の建築物を建築確認検査機関とは別に各知事指定の構造判定機関において再審査するのがこの制度です。
そこで、建築主が注意すべき点の一つ目は、計画物件が構造判定機関の審査対象になるかどうかの確認です。
木造の場合は、高さ13m又は、軒の高さが9mを超えなければ構造判定機関の審査対象にはなりませんから、通常の木造住宅は対象外と考えてよいと思います。但し、1階が鉄筋コンクリート造で2〜3階が木造の場合等は、剛性率や偏心率が一定の数値を超えると構造判定機関の審査対象になります。この様な混構造の建物や鉄筋コンクリート、鉄骨造の建物については建築士に確認されることをお勧めします。
ニつ目は、建築確認審査期間の大幅な延長です。
正確には、従来の建築確認申請期間に構造判定機関での審査期間がプラスされることです。具体的には、建築確認審査期間の現行法定日数21日に構造判定機関での新たな期間14日(原則)以内をプラスすることになり合計35日になります。要するに建築確認審査期間の法定日数が35日に延長されるということです。
更に、構造判定機関での審査期間は合理的な理由があれば最長49日迄延長できまから、最長審査期間は、35-14+49=70日になります。審査期間が長期化するのは避けられません。
三つ目は、構造判定機関への審査費用が新たに発生することです。
具体的な費用は、現時点ではわかりませんが、概ね構造判定機関への費用だけで数万円から20万円程度はいるのではないかと推測しています。
最後に、建築確認申請中や工事中での設計変更がしにくくなります。
従前は、申請図書の訂正や差替え等は建築確認検査機関の裁量に任されていましたが、構造判定機関とのダブルチェックに伴い、審査書式も変わり原則訂正や差替えは出来なくなるようです。
従って、設計者の建築確認申請時の事前準備が大切で、とりあえず建築確認申請に持ち込むといった考え方は成り立たなくなります。又、従来特定行政庁の判断に委ねられていた中間検査の対象建築物ですが、今回の改正で3階建て以上の共同住宅は、全国一律に中間検査の義務付けが行われます。
確認済証通りの工事が行われていない場合や建築確認後に設計変更した場合は、軽微な変更を除き、計画変更の申請が必要ですが、従前以上の厳格な判断に基づき対処されるので、違反すれば強化された罰則を適用されます。どの程度の変更が従来からの「軽微な変更」にあたるのか、建築主は設計者等と綿密な打ち合わせの上、決めてゆく必要がありそうです。
今後も、様々な改定が予定されています。
基本的な方向性は、建築士への規制強化です。
姉歯秀次元建築士は、現在東京高裁へ控訴中ですし、北海道の浅沼良一元建築士も裁判中です。
アパ・グループのマンションやホテルからも次々と耐震強度不足が発覚しており、耐震偽装問題の本質の解明はまだまだこれからです。
建築基準法や建築士法等の改正が先行していますが、建築士への罰則と規制の強化の色合いが強く、本質的な問題の解決や事件の再発防止にどれほどの効果があるのか、専門家の間でも疑問視されています。
先ずは、一連の耐震偽装問題の本質の解明とその責任の所在を明確にすることが望まれます。
それに伴い、指定構造計算適合性判定機関(以下、構造判定機関という。)が設立され、愈々この6月20日から施行されます。
姉歯秀次元建築士の構造計算偽装の事件以来、耐震強度不足の建築物が発覚し、又構造計算書や計算プログラムに不適切な使用方法があり、更に指定確認検査機関の偽装見逃しなど社会的大事件に発展したのを受け国土交通省が建築基準法、建築士法等の抜本的制度見直しを行った結果です。
今回の制度見直しについては、建築業界では様々な議論を呼んでいますが、当面の6月20日施行の内、「構造計算適合判定の義務付け」に絞って、現在の時点でわかる範囲で建築主が注意すべきポイントを、お話します。
耐震偽装事件後にマスコミにおいても時々取上げられた、構造の専門家同士で計算書を見直しするいわゆるピアチェックを、具現化したのが構造判定機関による計算書の審査で、一定規模以上の建築物を建築確認検査機関とは別に各知事指定の構造判定機関において再審査するのがこの制度です。
そこで、建築主が注意すべき点の一つ目は、計画物件が構造判定機関の審査対象になるかどうかの確認です。
木造の場合は、高さ13m又は、軒の高さが9mを超えなければ構造判定機関の審査対象にはなりませんから、通常の木造住宅は対象外と考えてよいと思います。但し、1階が鉄筋コンクリート造で2〜3階が木造の場合等は、剛性率や偏心率が一定の数値を超えると構造判定機関の審査対象になります。この様な混構造の建物や鉄筋コンクリート、鉄骨造の建物については建築士に確認されることをお勧めします。
ニつ目は、建築確認審査期間の大幅な延長です。
正確には、従来の建築確認申請期間に構造判定機関での審査期間がプラスされることです。具体的には、建築確認審査期間の現行法定日数21日に構造判定機関での新たな期間14日(原則)以内をプラスすることになり合計35日になります。要するに建築確認審査期間の法定日数が35日に延長されるということです。
更に、構造判定機関での審査期間は合理的な理由があれば最長49日迄延長できまから、最長審査期間は、35-14+49=70日になります。審査期間が長期化するのは避けられません。
三つ目は、構造判定機関への審査費用が新たに発生することです。
具体的な費用は、現時点ではわかりませんが、概ね構造判定機関への費用だけで数万円から20万円程度はいるのではないかと推測しています。
最後に、建築確認申請中や工事中での設計変更がしにくくなります。
従前は、申請図書の訂正や差替え等は建築確認検査機関の裁量に任されていましたが、構造判定機関とのダブルチェックに伴い、審査書式も変わり原則訂正や差替えは出来なくなるようです。
従って、設計者の建築確認申請時の事前準備が大切で、とりあえず建築確認申請に持ち込むといった考え方は成り立たなくなります。又、従来特定行政庁の判断に委ねられていた中間検査の対象建築物ですが、今回の改正で3階建て以上の共同住宅は、全国一律に中間検査の義務付けが行われます。
確認済証通りの工事が行われていない場合や建築確認後に設計変更した場合は、軽微な変更を除き、計画変更の申請が必要ですが、従前以上の厳格な判断に基づき対処されるので、違反すれば強化された罰則を適用されます。どの程度の変更が従来からの「軽微な変更」にあたるのか、建築主は設計者等と綿密な打ち合わせの上、決めてゆく必要がありそうです。
今後も、様々な改定が予定されています。
基本的な方向性は、建築士への規制強化です。
姉歯秀次元建築士は、現在東京高裁へ控訴中ですし、北海道の浅沼良一元建築士も裁判中です。
アパ・グループのマンションやホテルからも次々と耐震強度不足が発覚しており、耐震偽装問題の本質の解明はまだまだこれからです。
建築基準法や建築士法等の改正が先行していますが、建築士への罰則と規制の強化の色合いが強く、本質的な問題の解決や事件の再発防止にどれほどの効果があるのか、専門家の間でも疑問視されています。
先ずは、一連の耐震偽装問題の本質の解明とその責任の所在を明確にすることが望まれます。