飛騨の古民家を訪ね歩いたとき、農家の造りは合理性に満ちていて

現代の住デザインのヒントが多くあることに驚きました。

限られた資材、人力、情報で極限まで洗練されたデザインは、

「美しい」と思いました。
null

さて、そんな農家には重要な働き手としての馬を納める家畜小屋がありました。

現代社会においてなくてはならない道具として、また働き手としてのクルマを

格納するガレージと同じことです。

クルマは巨大です。ましてや2台以上ともなるとそれを格納するスペースは

大きな容量となります。

人の生活スケールと比べて、ただ道具を格納するだけのスペースでありながら

バランスを欠いたボリュームです。

建築コスト的にも形態処理的にもいつもながら苦慮するところです。


こんな悩みは何も今に始まったわけではありません。

クルマ社会の入口にあったF.L.ライトの時代も同様だったのでしょう。

ライトは「カーポート」という概念を考案した最初の人といわれています。

建物庇を長く延長して空間を作り、そこをクルマの駐車スペースとするとともに

豊かなエントランスポーチとしてみせました。


ヒューマンスケールと乖離したガランドウスペースは壁が取り払われて、

豊かな周辺環境がすり抜ける、

外と内の中間領域としての価値が与えられたのでした。