スゥーと鼻から息を吸い込むと

とてつもなく清清しい、

まあるい透明の粒粒が肺を満たす。

そんな質感のある空気が流れている。

ああ、これがうわさに聞くマイナスイオンとやらか?


この生命感に満ちた空気が支配する土地は、

渓流に面している。

いくつもある淵には

岩魚が棲んでいる。

この土地にめぐりあえたnull建て主は幸運としか言いようがない。

実現がならなかった仕事も含め、

私がかかわった300以上の土地にも

ここまでのことはなかった。


私はここでどれだけの建築力を発揮できるだろうか。

つい肩に力が入るのを

必死に抑えるも一人の自分がいる。


瑠璃色にかがやくカワセミがざくざく流れる渓流を

横切るのを

なんども見かけた。