設計事務所を立ち上げて3年目に入る頃、ある人の紹介で
知り合うことになったクライアントは、東大阪市の近畿
日本鉄道『河内小阪』の駅前で、日本料理などを経営する
オーナーで住まいも、この駅から歩いて5分足らずと便利
な場所にあり、同じ並びで3軒離れた空き地に娘さんの
家族が生活する場として32年前建てられた、S造3階
建PH付の外観だけを先行し、内装工事を後回しにする、
息のかからなかった専用住宅である。

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何年か前、この近くにできた安藤忠雄作品で話題となった、
歴史小説に新風を吹き込んだ作家・司馬遼太郎の記念館に
入る機会があり、ついでに立ち寄りたくレンガタイルの外
壁を目印に歩き回りましたが見つからず、どうやら姿を消
したようでした。顔の見えない、はかない未完の個人住宅
を苦く味わう体験となりました。