2010年 8月の記事一覧
交通事故での死者は年々減ってるのですが、家庭内では増えてる・・・・
原因別では、溺死、窒息、転落・転倒、火災、中毒の順なわけで、溺死が一番多い。
家庭内で溺死といえば、お風呂になるわけです。どの家庭内での事故を見ても半数以上が65歳以上の高齢者と呼ばれる方々であり、溺死も同様です。
一昔まえの、銭湯で入浴してた時であれば、一人ではないのでお風呂で溺死ってのは、本当に少なかったはずです。それが、いわゆる内風呂の時代になって溺死が増えたのではと思っています。
また、溺死で言えば子供も多く、お風呂に残り湯を残しておいて、遊んでいて浴槽に落ちてっていうパターンのようです。火災に備えて浴槽にお湯を残すのは良いかと思うのですが、小さい子供さんがいない家限定にされた方が安全ですね。
お風呂もそうですが、トイレも内開きの扉は危険です。いわゆるコールドショックで梗塞を発症した場合など、トイレやお風呂の洗い場で倒れこんだ時に内開きですと身体が邪魔して開く事ができません。出来れば引き戸にするか、外開きにすべきです。
次に転落ですが、一番多いのが踊り場の無い廻り階段での転倒かと思います。十分な踏み面が無い内側を降りる場合が一番危険です。階段手摺も外周側に取り付けて外側を歩くように誘導するといいですね。たまに手摺の無い階段とか写真でよく見ますが、あれは怖いですよね。
転落で多いのが、ベランダからの転落。手摺子が横だったりするのも足がかりとなりダメですが、二次的につけたエアコンの屋外機や、ベランダに置かれた椅子などに立ち、手摺を乗り越え転落するというパターンです。エアコンの屋外機の設置には十分に注意をはらって場所選びしてくださいませ。
捜してみると住宅内にも危険はいっぱいあります。
この辺の想像力を働かせて計画した住宅は危険度は低くなっていくと思います。
あ、火災は言うに及ばずですので、今回は省略^^;
それこそ、ちょっと前に書いた「建築的嫌われもの」に書いたような建物はとくにエネルギーが必要だと思います。当然ながら誰か一人で出来るような建物は無いので、これまた多くの人が関わって完成を目指すわけです。
さて、2001年に三谷幸喜監督が「みんなのいえ」という映画を作りました。
見た方も多くいらっしゃると思います。この映画は三谷監督自身が自宅を建築する時の体験がベースとなったホームコメディ映画ですが、実際の建築においても部外者から見たら笑ってしまうような、コメディ的出来事はよくあるもんです。
で、私としては、建築に関わる仕事ですので、このツッコミどころ満載の映画を、単に笑える映画として素直に笑えなかった記憶があります^^;
まだ見ていない方、興味がありましたらDVDもあるようですので、どーぞ。
で、「みんなのいえ」は日本の個人の住宅を造るホームドラマですが、建築においていろんな人が関わるのは、日本だけじゃなく万国共通。公共建物ならなおさらのこと。
そこで、先週21日に公開されたのが、「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」というドキュメンタリー(?)映画。twitterならこちら
まだ名古屋では公開されていなくて、東京・渋谷のユーロスペースって所だけで公開してるようです。2004年から始まった美術館の改築工事のドキュメンタリーだそうで、中断につぐ中断で実はまだオープンしてないらしく、ドタバタは現在進行中らしいですね。一応2013年オープンを目指してるそうですが。
名古屋では10月に公開されるようですが、全国でも15カ所程度の映画館でしか公開されないようです。見逃すとDVDすら出来そうにありませんので、忘れないように今日はメモ代わりに。
あ・・・建築の映画と言えば「スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー」もはずせないですね。
「日本の家屋で木材を、それも国産の木材を使う率は恐ろしく低い理由のひとつは、日本建築学会が1959年に木造建築を否定したことにある」
ってな記述があったそうで、日本建築学会はその対応に追われて声明文というか釈明文まで出してます^^;
【日本建築学会・「建築防災に関する決議」について】これです。
「美味しんぼ」の中の記述は事実誤認なわけですね。
さてさて、上の建築学会云々は別として、建築基準法でも木造建築を禁止してる地域はあります。
防火地域内の一定規模の木造建築とか特殊建築物などの用途によって木造建築禁止の場合もあります。
で、それとは別に、上の建築学会の1959年の木造禁止決議ってのこの年。これは伊勢湾台風のあった年ですね。
名古屋は直撃だったものですから、その被害も甚大でそれを受けての決議だったのが上の建築学会の釈明文を読めばわかりますね。
当然ながら、直撃を受けた名古屋は、その後「名古屋市臨海部防災区域建築条例」を制定して、ここでも一部地域で木造建築を禁止しています。
これの赤に塗られた第1種区域の中です。
数年前にニュースにもなった「イタリア村」はこの第1種区域の中にあって、それが建築確認と違い木造だったから全て解体になっちゃったわけです。既に「イタリア村」は破綻して運営会社もろごとありませんが。
ちょっと前に「国産材を使おう」でも書きましたが、日本の林業は今危機的状況です。今朝の日経新聞にも柱用丸太材の下落が止まらないって記事がありました。海の為にも山の為にも国産材を使いましょう!
「建物の構造の内で強いのってどれですか?」
と、たまに聞かれます。
建物は全て建築基準法の規定に従って構造設計されています。当然ながらどんな構造においてもこの基準に従っているわけですので、その点で言えば強いも弱いも無くて基準的には同じって事になります。
じゃあ、「強い」って何?って事になるわけですが、一般的に言えば地震に対しての事かと思います。
建築基準法の計算規定では、木造の場合5種類(その他の構造は4種類)の計算方法があります。規模や高さとかでその計算方法が決まってくるわけですが、おざっぱに簡単に言えば、とにかく堅く変形しない構造にするか、のれんに腕押しの様なゆっくり揺れながら耐える構造の二つに分けられます。
早い話が、変形しない構造も揺れる構造も、同じ様に強いと表現されるわけです。
ここで木造住宅という点に絞って言うならば、一般に言う2x4工法とか在来軸組工法ってのは、変形しない事を目指している構造で、いわゆる「伝統構法」と呼ばれる構造は揺れる構造というわけです。言い方を変えれば、前者は耐震構造であり後者は制震構造とも言えます。
歴史的には、筋交いを使ういわゆる在来工法は明治24年の濃尾地震以降に研究され始め現在に至るまで、ドンドン強化されより堅さを追求した形になっており、現在の主流ともいえます。
それに対していわゆる伝統構法の歴史は言わずもがなですね。ただ、その構造解析がとても面倒で、現在の建築基準法では伝統構法の木造住宅を建てようと思うと、限界耐力計算って計算書を添付し構造の適合性判定を受けなくてはならなくなってるわけですね。まぁ、言ってみれば大工さんの技術継承が上手く伝わってこなかった結果とも言えるわけですが。
さて、免震基礎ってのがありますよね。これはご存じの様に、家の下に免震装置をつけて地震の揺れを少し受け流す装置なわけですが、上部構造はあくまでも堅い構造(木造で言えば2x4や在来軸組)が原則ですね。この免震基礎を伝統構法の基礎にしたら揺れが増幅されちゃう可能性もあり逆に危険になることもありますから、この組み合わせは無しです。同じ様に、いわゆる制震ダンパーなんかは、堅い構造には無駄とも言えます。もっとも使用場所によっては有効ですが、費用対効果から言えば耐震性を高めた方が効果的かと思うわけです。逆に伝統構法と制震装置の組み合わせはアリですね。一次固有周期の調整にはもってこいかと思いますので。個人的にはこれからはこの組み合わせじゃないかなぁと・・・・
そういえば、東京で建設中の東京スカイツリーの一次固有周期は10秒程度らしいですね。スカイツリー自体の必要性には疑問もありますが、そんな事よりそんな揺れだと船酔いする私は完全に酔いますね。
そして65年経った今でも、日本は唯一の被爆国である・・・・
事務所を始めてからもう20年以上経ったが、うちの事務所名のせいか年に1回程度「核シェルターの設計されてますか?」って電話がある。いやいや、想像は出来ても実際に核シェルターを見たことも無いんですよ。
で、その唯一の被爆国である日本での核シェルターの普及率(?)が今日のタイトルの0.02%らしいです。被爆国なのに、この数字はなんてノー天気なんだというご意見もあるかもしれませんね。ただこの数字自体、どうやって調べたんだ?って思う私ですが、私自身未だ見たこと無いですし、普及率が殆どないってのは想像に難しくありません。
が、日本にも「日本核シェルター協会」なるものがあるですね、これが。ここの理事長さんの会社である「(株)織部精機製作所」が実際に核シェルターを制作販売しているようです。内部はこんな感じだそうです。
核シェルターといっても、核攻撃に耐えられるというよりは、放射能汚染から2週間程度命を守るという感じで、空気清浄機が重要なようです。同社のHPを見る限りでは、構造的にも至近距離ならば安全だとは書かれています。ちなみに、5坪ぐらいの核シェルターで1500万円ぐらいのようですね。他にも、群馬県の「安藤建設」なんかも施工されてるみたいです。
さて、核シェルターと言えば有名なのはスイス。米ソの冷戦時代にスイスは国がその費用の1/2を補助し、全ての建物に核シェルターを義務付けた時代がありました。ですので、1963年以降の普通の住宅にはみんな地下に核シェルターがあるそうです。でもって、ソ連が崩壊(1991年)し冷戦終結してしばらくしてから国民投票で個人住宅への設置義務は無くなってるそうです。もっとも、公共施設への設置義務は今もあるそうですが。ですので、人口的な面で見れば今でもスイスは普及率100%なのでしょう。国策として核シェルターを作ったもんだから、その維持管理費も大変なわけです。ですので個人住宅では物置にしたりワインセラーにしたり、ホテルであればこんな風にシェルターを客室として格安で使用したりしてるそうです。
さて、核シェルターの必要性はともかくとして、地震国日本では防災シェルターは必要かと思っています。現実的に耐震的に問題のある木造住宅全てを耐震改修できません。ですので、既設の木造住宅の中に一部屋だけ耐震シェルターをこんな感じで入れ込み、命だけは助かる方法もあります。
また、それも難しいということであれば、防災ベッドで守るってのも一つの手です。耐衝撃性と耐荷重の優れた天蓋付きベッドということですね。
市販されてる防災ベッドはこんな感じです。 (株)ニッケン鋼機製・介護用防災フレーム
この二つの写真は、越谷市のHPからお借りしたものですが、防災ベッドに対して補助金を出してる自治体は多くあります。耐震改修を考えている方も、こんな方法もあるっていう事を参考までに。
ということで、平和記念日に。。。黙祷。
仕事するにもエアコンをつけないと、さすがに仕事ができません^^;
さて、今日のテーマは「ライフサイクルコスト(LCC)」です。
建物でいえば、企画からスタートして建築し修繕し最終的に解体撤去までの言ってみれば「生涯費用」の合計の事ですね。世に言う「ローコスト住宅」ってのは、このLCCで言えばイニシャルコストの部分だけを言っている場合が多いかと思いますし、建築主から見れば初期投資でもある建築費は重要なのは間違いありません。
ですが、現実は建築のLCCの中のイニシャルコストは一般的に25%以下なわけで、光熱費を筆頭に修繕費や保守などのランイングコストの方が遙かに大きいわけです。
(図:社団法人 日本電設工業協会)
ということで、LCCに重点をおいて考えましょうというのが今回のテーマなわけです。
最初に書いたようにこう暑いとエアコンをつけてしまうわけです。このエアコンをつけるという行為はランニングコストの一つなわけで、このランニングコストを少しでも小さくするように、我々設計事務所は日々考えているわけです。
当然ながら、イニシャルコストとランニングコストの合計がLCCなわけですから、イニシャルコストである建築費も小さいにこした事はないんですが、なかなかそれが難しいわけで、一般的にはLCCを小さくしようとするとイニシャルコストである建築費が高くなってしまう傾向がありますね。
例えば、マンションの場合ですと、管理費ってのでエレベータの維持管理費とか日々の清掃とかをまかない、修繕積立金ってのを毎月積み立て長期修繕計画によって大規模修繕をしています。ですから、機械式駐車システムがあったりプールがあったりしますと、それこそLCCは上がってしまうわけで、結果所有者負担は増えることになります。
本来であれば戸建て住宅であっても、マンション同様に毎月管理費と修繕積立をして欲しいのですが、これもなかなかしていただけなかったりします。これは我々設計事務所が長期修繕計画書を最初に建築主の方に呈示していないからなのかもしれません。(あ、LCCの計画書をしっかり作られてる事務所もあると思います)
このLCCってのは、建築だけに限ったわけではなくて、全ての物にあるわけです。一般に言えば車が一番わかりやすいかも。車ですと車検があったりオイル交換があったり洗車したりとマメにされる方も多いですね。ただ、それが家となると・・・
よく言うLCCでは、家族が増えるとかでの増築なんかも入れて書かれている所も多いかと思います。当然ながらそれも入れなければいけないのですが、ちょっと前に書いたように、「住み替えしよう」も一つの方法なわけです。一つの建物だけのLCCを考えるだけでなく、社会のストックとしての住宅を考えた場合、町内とか市内とかある程度のエリア全体でのLCCを考えるのも必要かと思うわけです。
また、ライフサイクルCO2(LCCO2)という言葉もあります。生涯排出CO2の事ですが、前回書いた「国産材を使おう!」もこのLCCO2を少なくする一つでもあります。
当然ながら、エアコンを付けないで我慢するとかもLCCを小さくするひとつです。世の中便利になりすぎてLCCやLCCO2も大きくなりすぎてると思うんですよね。もっと我慢というか、機械や装置に頼らないスローライフも見習わなくては。
と、日々こんな事を考えながらいるわけです。