「建物の構造の内で強いのってどれですか?」

と、たまに聞かれます。
建物は全て建築基準法の規定に従って構造設計されています。当然ながらどんな構造においてもこの基準に従っているわけですので、その点で言えば強いも弱いも無くて基準的には同じって事になります。

じゃあ、「強い」って何?って事になるわけですが、一般的に言えば地震に対しての事かと思います。
建築基準法の計算規定では、木造の場合5種類(その他の構造は4種類)の計算方法があります。規模や高さとかでその計算方法が決まってくるわけですが、おざっぱに簡単に言えば、とにかく堅く変形しない構造にするか、のれんに腕押しの様なゆっくり揺れながら耐える構造の二つに分けられます。

早い話が、変形しない構造も揺れる構造も、同じ様に強いと表現されるわけです。

ここで木造住宅という点に絞って言うならば、一般に言う2x4工法とか在来軸組工法ってのは、変形しない事を目指している構造で、いわゆる「伝統構法」と呼ばれる構造は揺れる構造というわけです。言い方を変えれば、前者は耐震構造であり後者は制震構造とも言えます。

歴史的には、筋交いを使ういわゆる在来工法は明治24年の濃尾地震以降に研究され始め現在に至るまで、ドンドン強化されより堅さを追求した形になっており、現在の主流ともいえます。
それに対していわゆる伝統構法の歴史は言わずもがなですね。ただ、その構造解析がとても面倒で、現在の建築基準法では伝統構法の木造住宅を建てようと思うと、限界耐力計算って計算書を添付し構造の適合性判定を受けなくてはならなくなってるわけですね。まぁ、言ってみれば大工さんの技術継承が上手く伝わってこなかった結果とも言えるわけですが。

さて、免震基礎ってのがありますよね。これはご存じの様に、家の下に免震装置をつけて地震の揺れを少し受け流す装置なわけですが、上部構造はあくまでも堅い構造(木造で言えば2x4や在来軸組)が原則ですね。この免震基礎を伝統構法の基礎にしたら揺れが増幅されちゃう可能性もあり逆に危険になることもありますから、この組み合わせは無しです。同じ様に、いわゆる制震ダンパーなんかは、堅い構造には無駄とも言えます。もっとも使用場所によっては有効ですが、費用対効果から言えば耐震性を高めた方が効果的かと思うわけです。逆に伝統構法と制震装置の組み合わせはアリですね。一次固有周期の調整にはもってこいかと思いますので。個人的にはこれからはこの組み合わせじゃないかなぁと・・・・


そういえば、東京で建設中の東京スカイツリーの一次固有周期は10秒程度らしいですね。スカイツリー自体の必要性には疑問もありますが、そんな事よりそんな揺れだと船酔いする私は完全に酔いますね。