2013年 1月の記事一覧
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小澤ホールは、広い公園の中に建っているのですが
この施設の他にも、1938年・大音楽ホールや
1941年・オペラ劇場などの
古くからの施設も点在しています。
ボストン交響楽団が滞在していない時でも、
市民の憩いの場として、あるいは音楽活動の場として
一年を通じて活用されているわけです。
こうした環境の中に、この小住宅はあります。
コロニアルスタイルのこの住宅は、
宿泊棟としてホールから程良く離れた森の一角に
ひっそりと建てられています。
この外観、我々から見ると一つの洋風住宅ですが、
米国では、様々な住宅形式の代表的な
スタイルの一つです。
ご存じのように、コロンブスが
アメリカ大陸を発見して以来、
ヨーロッパから様々な国々の開拓団が上陸し
多民族国家の礎が築かれました。
従来から住んでいたインディアンに加えて、
ニューヨークのある東海岸では、
イギリス、オランダ、ドイツ。
カリフォルニアのある西海岸では、
スペイン、メキシコ。
ニューオリンズのミシシッピ河流域では
フランス。
これだけの国の、様々な住宅スタイルが
ミックスされているわけですから、
その住宅スタイルだけでも様々な変遷があることは
容易に想像できますね。
このボストン辺りの住宅は
ニューイングランドスタイルと呼ばれ、
内部の構造体がポストアンドビームと呼ばれる
軸組み構造を為しているものが数多くあります。
これはちょうど、日本の在来工法の感じです。
ですから、この住宅の内部にも
2×4工法と併用して、このような柱や梁が
古い民家から移築されて、活用されています。
こうした、内部空間の特徴一つにも
アメリカ住宅の歴史の一部が現れているんです。
こうした歴史の記憶が残る住宅づくり、
参考にしたいですね。
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様々な見所がある小澤ホールですが、
ちょっと、そのバックヤードを覗いてみましょう。
このホールに接続されているオーケストラの控え棟。
コートハウスのように、中庭と外廊下の廻りに
各控え室や練習室、会議室、水回り
などが設けられています。
つまり、各部屋への行き来は
外部の廊下を通って移動することになります。
ここがボストン交響楽団の夏の家を呼ばれるように、
主に利用される時期の気候を考慮して、
その自然の中に身を置こうとする考えから
採用されている配置のような気がします。
この建物は、米国の在来工法である
枠組み壁工法、いわゆる2×4工法で創られています。
そして中庭には、米杉板が敷き詰められたデッキ。
えっ、って思ってしまうほどにシンプルで素朴。
うがった言い方をすれば、
ちょっと安普請過ぎません?
横の繋がっているホールから、
直接、ここへ来られるわけですから・・・・。
しかし、この控え棟。
実際に体感してみると、
その違和感を感じることがありません。
おそらく、ホール外側を取り巻く
ヘビーティンバーの外部廊下からの
延長上に位置しているためだと思われます。
外部廊下の天井に目をやると、
露出されたタル木と野地板、
そして、載せられただけの桁梁と柱。
この潔いまでのディテールが、
かえって、シンプルな清廉さを醸し出しています。
外壁に目をやるとそこには、
杉板の押し縁による竪格子を思わせるパターンと
日本の伝統色を思わせるえび茶系の扉で構成され、
全体としてデザインされたペンキ塗の壁。
ペンキは、外部用によく利用される塗膜性の厚いもの。
こうした、肩肘を張らないで、
それでいて、デザインされたプロポーションの良さ。
日本建築の精神的な部分に共通する心が
私の琴線に触れた印象的な建物でした。
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マサチューセッツ州、タングルウッドにある小澤征爾ホール。
主体構造は、鉄骨造ですが、100年以上前の工場の木造躯体や
チーク材による繊細な造り込みがなされています。
もう少し、そのディテールに触れておきます。
可変的な対応ができるホールへと変貌させるのが、
まず、妻壁ある6mもあるチーク製の大開口部。
これが開閉されることで、手前の芝生広場が
内部のホールと一体化されるわけです。
もちろん、この建具には鉄骨の骨組みが併用されていますが、
外部に対しては、見事なチークの壁と化しています。
建物の両側を取り巻いているのが米松製の外部廊下ですが、
この骨太の柱・梁が、工場架構の再生材。
その手摺は、主柱から金物で浮かしたフレームに
組子細工の格子がはめ込まれていて、
非常に美しいプロポーションを創り出しています。
写真では、少々ごつく見えていますが、
廊下全体のボリューム感の中で見ますと
ちょうど良い塩梅なんです。
こうした、心地よいディテールは
内部のホールで、更に昇華されていきます。
2~3階のバルコニー席がこれまたチーク製でできているですが
これがまた繊細そのもの。
米松の梁によるキャンティレバーの仕様や
手摺の柱、そしてそこに挿入されている組子格子や椅子。
見るもの、触るものに日本的な感性が活かされ、
全体として、非常に繊細かつ大胆な空間構成が
産み出されているのですが、
これは、小澤征爾氏の音楽にも通じるものだと思います。
ボストン交響楽団の夏の家として知られ、
年間100万人超の来訪者があるとは思えない素朴な町ですが、
こうした建物の詳細を見るにつけ、
凛としたものつくり精神が貫かれていました。
http://www.bigapple-world.co.jp/wp-content/uploads/2012/04/3c6ccff18fee2cb873b1c69f49dca806.pdf
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