数年前、先輩建築家が車に乗るのに運転席と反対席ドアからロックを解除、その後運転席から乗り込んでいた。「何でそんなことを・・」と聞くと、「運転席のロックが壊れてて・・」と。車は年季の入ったボルボのワゴン。「早く直した方が良いですよ・・」などと言いながら、「なんと言うこだわり」「設計者はこうでなくては・・」などと変な感激もした。
丁度その頃、僕は乗っていたイタリア車の度重なる故障に耐え切れず、知人に売ってしまった直後だった。その車は僕の手を離れると、レース出場するほどに見事に生き返り、なんとなく淋しい思いをしていた。

 それから時が経ち、僕は再び中古の外車を購入することとなった。当時、日本の新車で欲しい車があったのだが、家神からの経済状況の忠告もありドイツ中古車とした。

 それから数年。ドイツ車は乗り心地がよく、遠出には最適であった。

 そして昨年秋。その日はオフィスから60kmの所のプロジェクト、見積り依頼。4工務店に1時間ごとに訪問予定となっていた。少し早めに出発したが、天気も良く国道の車の動きは順調であった。

 20kmほど走った時、突然「ボッン」という爆発音がして目の前が水蒸気で真っ白になる。その後、赤い水(又はお湯)が噴出。それは破裂というものではなく、まさしく爆発であった。もちろん車は時速60km程度で走行。前が見えないためワイパーを動かしながら・・こんな場面、なんかの映画で見たなーと思った。幸いなことに近くにガソリンスタンドがあり低速で駆け込んだ。ところがそこでは手に負えないと言われ、近くの修理工場に電話を入れてくれた。1社は外車を扱ってないと断られ、そこから300mの所の修理工場に自走で持ち込むことになった。・・この自走したことがさらに修理費がかさむことになるのだが・・・。

 修理工場につくと「ラジエーター破裂でこんな激しいのは初めてだぁ」「・・・」「購入した所で修理した方が良いのでは」などと言われ・・少し淋しい気持ちになったが、気を取り直して電話をし、車を取りに来てもらうこことした。そういえばその兆候はあったかもしれない・・などと思いながら。

 僕には時間がない。これから4社の工務店に図面説明・見積依頼、そして役所にも行かなければならない。今日は忙しい。そこで家神に電話、もう一台の車を持って来てもらうことにする。その後、訪問1社目の時間を夕方(最後の時間)に変更してもらい、他の3社は時間通りに到着という作戦を取った。

 本作戦は完璧な計画であったが、しかし、一つ見落としていたことがあった。2台目の車も古いイギリス車だった・・・。

 そうこうしてる内にイギリス車が到着、そして代車を乗せた車輸送車が到着。一通り説明を聞き、後は家神に任せ、先を急いだ・・・。

・・・長くなったので次回へつづきます。