静岡県との県境にある、観光地・湯河原。
熱海温泉と隣接し、箱根温泉とも隣り合う、古くからの温泉町として有名な所である。
その湯河原温泉が、少し前から「小京都・湯河原」を名乗っていたことは私も知っていた。
小京都と名乗ることに違和感はあったものの、そこに至る経緯も知らなかった。ただ、観光地としてのPRに役立つのだろうという程度のことしか思っていなかった。
その湯河原町が4月から、「小京都」と言う冠を使うことを止めることになった。

そのニュースから、「小京都」の冠を使うには基準があることも知ったし、全国に50箇所もの小京都があることも知った。同時に地方の観光地が、観光客を誘うためのPRに、苦労している実態も窺い知る事が出来た。
湯河原町は昔から、いろいろと努力している町だと思う。
バブル景気の頃、大手デベロッパーによる大規模マンションの開発計画が乱立した時期があった。当時、事務所勤めをしていた私は、デベロッパーの計画するマンション開発計画業務を担当した側で、町との協議を何度も重ねた経験がある。あの頃は確かに景気だけは良かったけれど、ともすれば「金があるんだから何してもいいよね」と言う風潮があったような気もする。

町は急激に変貌しようとする街並みを憂い、一部の地域に対して建物への美的基準を設けたりもした。その基準の中身の良し悪しは別にして、町に対する愛情や愛着を感じたことは確かだった。

やがてバブル期は過ぎ、開発の荒波は引いていったが、同時に観光客の姿も少しずつ少なくなっていく。減る一方の観光客、低迷する町の経済を憂い、「小京都」の冠にたどり着いたのかもしれない。

でもその冠を外し、もう一度ほんらいの湯河原町の魅力を見つめ直して、町の将来像を想い描けばよいと思う。それが観光地としての湯河原温泉になるのか、首都圏のベッドダウンとしての街づくりなのか、あるいは高齢化する社会に対する何かなのかは、みんなで考えればいい。脱却することは悪くないと思うから。冠を外すことで頭が軽くなり、上を見ることも出来るかもしれないとも思う。

京都の名を借りた街づくりも悪くないけど、唯一無二の街づくりには、きっと大きな価値があると思う。期待しています、湯河原からの発信を。


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