震災の少し前に相談を受けたリフォーム工事。
設計料あるいはデザイン料などを、頂戴することも憚られる低予算だったので、実質私は何もしなかった。ただ、引き受けてくれそうな工務店を探し、現地で直したい箇所と簡単な方針を口頭で説明し、見積もりに関しては発注者に直接提出して欲しい旨を伝えて、そこで終了。

図面を書くという作業は、口頭で説明するだけでは足りないから、それを補うために書くのであって、今回のように口頭で説明すれば伝わる、あるいは意図を汲み取って貰えると言うのなら、それで十分なわけです。だから実質的には、設計っぽい作業をしたと言えなくも無い(笑)

その後に関しては、ときどき電話で見積もりの様子や、作業の進捗状況に関して様子を伺っただけ。それでも、4~5回は現地に行ったかも? そんなリフォーム工事が終わったと、工務店さんから連絡をいただいた。

図面を書いたわけでもなく、色を決めたわけでもない。
ディティールに悩み、デザインに頭を捻ったわけでもない。経費だって貰ってない。
でも気になるのです。どんなふうに出来上がったのかが、無性に気になる。

たぶんこう言う気持ちは、物を造っている人にしか分からない気持ちだと思う。ほんの少しでも自分が携わったことが、どんな形で完成しているのかが、無性に気になる。で、我慢は体に悪いので、引き渡す前に出来上がりを見せて貰うことにした。
まずは玄関。
以前はひび割れたモルタル塗りの玄関に、飛び石が置かれ砂利が敷かれた。
壁はビニールクロスが剥がされ、すさ入りの左官仕上げ。
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ウェィト(客待ち)の正面には押入れを改造した、展示スペースが施された。
ダウンライトが設けられ、和のテイストを感じさせながら、洒落た室内を演出している。
ゴチャゴチャしていた電話類の配線は、雨戸の戸袋を加工し、綺麗に収められた。
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あちこち桟が折れていた障子は全て補修され、建て付けも調整された。
暗かった室内の照明も取り替えられ、落ち着いた雰囲気を感じさせる。
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床の間の壁も塗り替えられ、照明器具の灯りが柔らかい印象を与える。
「暗い」のではなく「照度を落とした空間」は落ち着きを生み、癒しを生む空間に変わった。
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大正ロマンを感じさせる設えは、日常の喧騒からは遠く離れた、束の間のひと時に誘う。
着物が似合いそうな場所。
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以前は暗かった廊下にも、なんともノスタルジックな照明器具が設けられた。
なんかイイ感じ(笑)
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この他にもトイレには御影石が敷かれたりと、各所に手を入れた痕跡が見受けられる。
このリフォーム工事の費用がいくらだったかのかは、言わぬが花。
ただ工務店の親方をはじめ、協力してくださった職人さんたちが、半ばオモチャをいじるように楽しんで造ってくれたから出来た話であって、他のメンバーなら出来なかった工事だと思う。

リフォームでも新築でも予算があり、どんなに欲しいものでも、どんなに直したい箇所であっても、予算が無いときには優先順位を考え、諦めるところは諦めなければならない時がある。その優先順位を付けるのも、施主の大事な仕事のひとつ。何も無いゼロから物を作り出すということは、そう言うことなのです。

この後に、もう一捻り、二捻りがあるようだが、それはオーナーの自分工事のようなので、また機会があったら見に行こうと思う。それからオーナーの希望で、「HPやブログに詳細が分かるようには書いてくれるな」ということなので詳しくは書きません。

造る側は、建物を造るまでが仕事です。
その建物を上手に利用し、生活あるいは仕事に活用されていくのは、施主のお仕事。
上手く活かせてもらえると良いなと、心から願います。


工事を担当して下さったのは、下記の工務店でした。
お疲れ様でした。
小田原を中心に介護リフォーム・ペットリフォーム工事を行う中川工務店


神奈川県小田原市荻窪314正和ビルみなみ302
天工舎一級建築事務所
TEL 0465-35-1464
E-mail toshio0223@k-tantei.com 

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