「納得いかない」という感情の表現が嫌いだ。
どんなに理に適っていることでも、主観でそれを嫌えば、「納得いかない」という言葉を使うだけで、それら全てを完全に否定することが出来るからだ。しかもその否定の仕方は、少しは好きな部分、あるいは納得できることがあっても、それら全てを完全に無視して、全てがゼロかのように否定することができるからだ。

そしてにその言葉を使う側は、わりと軽薄にその言葉を使っているような気がする。きっとボキャブラリの少なさを、稚拙な感情表現で表すのに最適な言葉なのかもしれないとさえ思ってしまう。
それほどこの「納得いかない」という言葉が嫌いなのだが、あえて言いたい!

「納得いかない!」と。
納得いかないのは、とある行政の対応に関して。
住宅を新築する計画地で、先日、遺跡の試掘調査を行ったのだが、その結果、もう少し深く掘り、遺跡の調査をしたいので本格的な発掘調査を行うという結果が出た。この結論が下されたことで、本発掘の調査が終わるまでは、建物の工事には着手できなくなる。

役所が言うには、本格的な発掘調査に取り掛かれるのは、早くても年が明けた来年の春以降で、調査に着手してから2ヶ月ほどの期間が掛かるという。ということは、どんなに早くても半年以上は、何も出来ないという事?それはいくらなんでも待たせすぎだろう~。


個人が自宅を売却し、さらにローンを申し込んでの自宅新築計画に際して、役所はただ黙って半年待てという。こちらが「もう少し早く対応してもらえませんか」と申し入れても、そんなことは知らないの一点張り。その理由として、調査する人が居ない。仮に調査する人が居たとしても、役所の人間が、あちこちの現場に立ち会うことが出来ないから、黙って待てという。

もともとこの土地が、文化財の発掘調査の対象地に含まれていたなら、それでも我慢するしかないが、実はこの土地は、もともとは調査対象には含まれて居ない土地だったのだ。

土地は開発許可という手続きを経て造成された造成地の一角にあり、開発許可の協議の段階で、「この土地は文化財の調査はしなくても良い」と言う内容で許可されていた。開発工事が始まり、土地を探していた施主は、この土地を購入することに決め契約をした。
勿論、その時点では、この土地は文化財発掘調査の対象地ではなかった。

ところが造成工事の最中に現場を訪れた役所の担当者は、「予定には無かったけど、この土地も調査対象地にしましょう」と、まるで思い付きのような一言を、造成業者に押し付けたのだ。業者が抗議すると、「万一、試掘調査の後に本格的な発掘調査の必要が生じた場合には最優先で作業を行い、そこは最大限の配慮をするから」と、回答する行政側。

結果的に行政に逆らえない開発業者は、その旨を施主に伝え、その結果、その皺寄せが、住宅を建てようと計画している、施主ひとりに被されることになってしまった。

造成工事は終わり、土地は施主に引き渡された。
「本発掘を行うので、建物工事は半年以上、行うことが出来なくなりました。」という言葉と共に。

納得できない施主が役所に行き、「せめて早い時期に、本発掘の作業に取り掛かってくれないか」と頼んでみたが、「そこは順番ですから、お待ち下さい」と、門前払い。

「こんな話、あんまりだ」と、施主は泣いてました。
自宅売却に伴う金銭的なリスク・引越しの予定・着手の時期・土地を購入したまま年を越した税金・それら全ては施主個人に重く圧し掛かる。

そして役所の担当者は涼しい顔で、こう言うんです。
「これも役所の仕事なんで」。


ちなみに文化財保護法は国の法律なので、この状況で行政指導に逆らうと、罰則規定があります。
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文化財に損害をあたえるなどした場合、国指定のものであれば「五年以下の懲役若しくは禁錮又は三十万円以下の罰金」、都道府県指定のものであれば「1年以下の懲役若しくは禁錮又は5万円以下の罰金若しくは科料」に処されます。
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今回の文化財は都道府県知事指定のものだから、1年以下の懲役か禁錮、もしく5万円以下の罰金にあたる訳ですが、普通の人はそのリスクを背負ってまで無茶をしようとは思わないのです。なんだか、やり切れないのです。


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