2009年 6月の記事一覧

«Prev1Next»
09年06月30日 21時18分54秒
Posted by: truthroad
施工会社では、表向き〈設計料〉というものを取らないのが一般的です。
「設計はサービスです」とまで言う所も少なくありません。
片や、「設計料は建設費の5%をいただきます」という事で、
はっきり〈設計料〉を取る会社もあります。

では、〈設計〉は無償で出来るのかを考えてみましょう。
一軒の大切な「お家」を形にするには、
それなりの「手間、暇」が掛かるのは当たり前です。
ポイント(4)で書かせていただきましたように、
一軒の家を数枚の図面で作ってしまう場合であっても、
果たしてサービスで出来るのでしょうか?

〈設計料〉は取らないと豪語する会社でも、実は建設費の中に、
それなりの金額を見込んでいることは当然の事です。
〈設計料〉と明記しないというだけで、
決して無償で行う訳ではないのです。
そのような会社では、〈設計〉に掛ける費用を出来るだけ
低く抑えようとします。
プランを決めるのも、〈じっくり〉という構えにはなりにくいのが現状です。
描く図面も本当に必要最小限となってしまいます。

結局のところ、そのような会社では〈設計〉については、
あまり重要とは捉えていない可能性が高いと考えても仕方ありません。
〈設計力〉がお金を頂くに値するものでないから、
〈設計料〉を表に出さないという捉え方が出来るかもしれません。

〈設計〉に掛ける費用は「無駄」とお考えの方は、
そのような可能性のある会社に、
大切なマイホームの建設を委ねるのも、良いのではないかと思います。

しっかりした〈設計〉は、決してサービスでは出来ないのです。
ならば、それなりの費用を掛けて、〈設計〉に責任を持ってもらう方が、
より《確実》と考えるのは、とても自然ではないでしょうか?
09年06月24日 18時12分55秒
Posted by: truthroad
監理業務をする中で、重要な事でありながら、
ちょっと注意が不足すると起こりやすいと感じる事柄があります。
今回は「耐力壁の面材」の施工について書かせていただきます。

つい最近もそのような事例に遭遇しました。
どんな面材を使うかも大切ですが、留める釘もとても重要です。

施工会社の現場代理人より「壁の構造面材の施工が完了しましたので、
確認をお願いします」との連絡を頂き、現場に行きました。

施工の状況を見て、何だか「違和感」を感じました。
釘の打ち方、間隔は完璧でしたが、釘の頭が「小さい」のです。
「これ、指定の釘? 指定の釘じゃないんじゃないですか?」と
現場代理人に確認すると、
「いえ、指定の釘だと思いますが・・・」とちょっと心許ない返事。
すぐに「使った釘の箱を持って来い!」と現場の大工の親方に代理人は指示。
その箱を見るまでもなく、それは指定した釘でないことは分かりましたので、
その場で釘を指定の物で打ち直しするよう指示しました。

構造的な部分に使用する釘は太目釘と言って、一般的な釘より
少し太い釘を使います。
長さは同じでも、指定の釘でないと規定の耐力が出ないという
現象が起こります。
これは実物実験でもはっきりしている事です。

釘の管理を大工さん任せにしてしまっていて、
且つ、その大工さんがあまり面材の耐力壁の経験がないと
起こる可能性のある事柄です。
この現場では、現場代理人もそのような知識が不足していたようで、
普段、自社の監理で行っている現場では、
そのまま竣工してしまうという危険性も考えられます。

更に、注意が必要なのは、その釘のめり込みです。
釘の頭が面材の面より中に食い込んでしまう現象です。

今は釘打ちは機械打ちが一般的で、機械での打ち込みでは、
時として、このめり込みが起こりやすい傾向があります。
めり込みにより、やはり規定の耐力が出ない状況となります。
構造的な面材の場合、手打ちが最高ですが、
機械で打ち込み場合は、ある程度まで打ち込んで、
最後は手で打つという配慮が必要です。
09年06月19日 20時48分08秒
Posted by: truthroad
家づくりのポイント(3)で、具体的に《設計》という部分を、
その施工会社がどう扱っているのかを知るための切り口を3点挙げさせて頂きました。
その一つ一つについて、具体的に見ていきましょう。

①設計打ち合わせをどのように進めて行くのか?
 設計の打ち合わせは、ケースバイケースという部分は当然ありますが、
 「我が社では、このような流れで設計の打ち合わせを行っています」と、
 スケジュール的な雛形を提示してもらえる所は安心感があります。
 特にスケジュール的な資料もなく、具体的な流れの説明も曖昧なら、
 ちょっと注意が必要です。

②設計担当者と会う。
 設計担当者が一人であれば、その方の人となりを直感で捉えましょう。
 設計打ち合わせを重ねていく中で、「相性」というものがとても大切な要素となります。
 そのあたり、将に「直感」で感じましょう。
 担当者が複数の場合は、具体的に誰が担当者になるのかを教えてもらいましょう。
 そして、物件を確認して「気に入った」と感じた物件の担当者であるのかどうかも、
 確認が必要です。
 会社内で、ある程度のマニュアル化されていても、「個人」の差は
 どうしても出てきてしまいます。
 設計担当はとても大切なポイントです。
 じっくりと目を凝らして、「人定め」をします。
 その力量は、資格だけでは簡単に判断出来ないところもありますので、
 注意が必要です。
 場合によっては、設計を外部の人間に頼んでいる場合もあります。
 それがその会社の《設計力》となっていれば、
 そして、その担当者の「人となり」も評価出来たら、それも「可」としましょう。

③これまで建てた物件の図面を見せてもらう。
 《設計力》という部分で、「図面」というものもとても重要です。
 「これが標準的な図面となります」と差し出されたものが、
 20枚、30枚の図面なら、「設計」という部分で、
 丁寧に考えていると思って良いと思いますし、「安心感」があります。
 何千万円の家が、数枚の図面で作られているとしたら、
 大袈裟に言えば、もう「賭け」のような世界に入り込む事になります。
 しかし、小さな工務店など、本当に最低限の図面しか描かないのが一般的です。
 この現実が突きつけられたら、「賭け」を選ぶか、「堅実」を選ぶか、
 自己責任で選択しましょう。
09年06月13日 18時50分03秒
Posted by: truthroad


先回、「金物と木組み①」で、『木を組む形の接合と金物を使った接合の
強度的な比較をすると、「強さ」は金物を使った方に軍配があがります』と書きました。

であるならば、金物を積極的に使えば良いのではないかという事になりますが、
考えるべき部分としては、一つは「相性」という事柄があります。
色々な方が言っておられますが、「木」と「金属」の相性は決して良いとは言えないのです。
「木」と相性が良いのは、「木」であり「石」だと言われています。
木組みにこだわる時、その「相性」という事を考えて、金物は最小限にしようと考えます。

もう一つ、「強さ」だけを考えた時、「金物」を選択する考え方はとても簡単です。
「金物」の選択を優先すると、接合部の複雑な加工は必要なくなり、
極端な話、ぶつ切りの木材を接合金物でつなげていけば、丈夫な構造体ができてしまいます。
将に「合理化」です。
そこには、日本という国がその歴史の流れの中で受け継いできた「木構造」の
伝統技術、智恵の継承という「文化的な視点」はありません。

そうなれば、「大工職人」は姿を消していくでしょう。
伝統技術、智恵を持たない「組み立て工」ばかりとなり、
「木」を知っている職人はいなくなり、
日本の「木の文化」は衰退の一途をたどって行きます。

「木組みの家」は、強さを追求するのではなく、
大工職人が、使う木の一本一本の性質を「木」に聞きながら、
使い方、組み方を考え、確りした構造の知識を持った人間が、
「木」の耐えうる力を考え、各部分でそれなりの耐力を分担するよう、
構造的な計画をしていくことも大切な要素なのです。
現代の「「木組みの家」には、職人の「伝統的技術」や「勘」「智恵」も必要ですし、
構造的な検討という力学的な「知識」もとても重要です。

木の変化を知り尽くし、その変化も「緩み」にしないで、
「結合の強化」という方向に変えてしまうような
木と木の組み方の技術、智恵を守る意味でも、
そしてもっと大きくは、日本の「文化」を守る意味でも、
一棟の「木組みの家」をつくる事は、とてもとても意義のある行為なのです。
09年06月07日 15時11分39秒
Posted by: truthroad
ポイント(2)で、施工会社に依頼する場合に大切なのは《設計力》の見極めというお話をさせていただきました。
端的に言えば、その会社が実際に建てた家を数軒見せてもらうのが、
一番良い方法です。
そこで、自分がどう感じるのかを、自分に問えば良いのです。

見せてもらった数軒が、平均的に「気に入った」という感触があれば、
あなたにとっては、その会社はそれなりの《設計力》があると判断して良いと思います。
建てるのは「あなた」ですから、自分の感覚での判断でOKです。
家族で判断する場合は、家族全体でどう感じたかを出し合って、決める必要がありますので、
決めるのはちょっと大変かもしれません。

数軒を見て、「気に入った」ものと「何だか、いまいち・・・」のものとばらつきがあったら、
《設計》という面では期待できないと判断すべきで、
その時点で、その会社は選択肢から外します。
高いお金を出して、もし「何だか、いまいち・・・」の方に転がってしまったら、最悪です。
「賭け」をする必要はありません。

第一段階がクリアできた会社については、次の見極めの段階に入ります。
実際に建てるという段階に行くまでに通らなければならないのは、
《設計》という作業になります。
それは、建て主を含めた形で、打ち合わせを重ねて、形にしていく作業です。
ですから、その「設計打ち合わせ」をどのように進めて行くかを聞きます。
そして、実際に設計担当の方と会う事と、
これまで建てた物件の図面も見せてもらいましょう。

②に続く
«Prev1Next»